背景
数年単位でトレンドの継続性は変化しており、トレーダーは常に手法を更新していかないといけないことは、多くの爆益を出したトレーダーですら数年で退場することを見れば明らかです。
今回、コロナショック後の現在の相場における適切な手法を見つける準備として、相場ごとにどの手法が適しているかを、相場と手法をシンプルなモデルに置き換えて検討してみました。
方法
検証するシンプル化した手法は以下の通りです。
1、上がったら買う、下がったら売る
2、上がったら売る、下がったら買う
3、下がって上がったら買う、上がって下がったら売る
4、上がって下がったら買う、下がって上がったら売る
以下の3種類の相場モデルを対象とします。
1、トレンド
2、規則性のあるレンジ
3、規則性のないレンジ
結果
上がったら買う、下がったら売る(いわゆる順張り)
上がっているものや下がっているものを追っかける手法です。まずはトレンドに適応してみました。ただしアップトレンドで売るのは明らかにナンセンスなので、買いだけ行いました。この手法では前回高値をブレイクアウトし、伸びていくときに利益が出ましたが、押し目が全て損失となりました。予想外に勝率は低く、43%でした。
次に規則的なレンジです。当たり前ですがレンジでは伸びていく値動きが少ないため、上がった後に買う/下がった後に売るのでは、逆行することがほとんどでした。勝率はたったの30%。
不規則なレンジでは、規則性のあるレンジと同様、伸びていく値動きが少ないため機能しにくいですが、規則性のあるレンジと比較すると、ボラティリティが拡大する局面で値動きが伸びるので勝ちが少し多くなります。しかし勝率は41%にとどまりました。
上がったら売る、下がったら買う(いわゆる逆張り)
まずはトレンドに当てはめてみます。こちらもアップトレンドで売るのはナンセンスなので買いだけに限定します。こちらは押し目でも利益を吐き出さないのが特徴で、途中の大きな押し目の中ですら1勝2敗で乗り切れています。勝率は66%と良好。
つづいて規則性のあるレンジです。レンジは値動きが伸びにくく、逆にすぐに反転するので逆張りがうまく機能することがわかります。とくにレンジ上下限のもみ合いにとても多く、その部分で3連勝できることが分かりました。勝率はなんと70%。逆張りが良いと言われるのも無理はありません。
不規則なレンジにも当てはめてみました。先ほど同様、レンジ上下限のもみ合いで3連勝できるのは変わりませんが、こちらはボラティリティが上昇する局面で値動きが伸びるので、そこで負けが増加し、勝率はやや低下して62%でした。
下がって上がったら買う、上がって下がったら売る(トレンド転換に乗っかる手法)
次に、値動きの方向が転換したらそれに乗っかる手法を検証します。まずはトレンド、買いのみで検証。こちらはエントリー回数が少ないですが、小さな押し目を全て回避することができ、驚異の勝率75%をたたき出しました。
規則性のあるレンジでは思ったより勝率は低く44%でした。伸びる値動きが利益の源になるので順張りに近い手法であり、もみ合いになると利益を吐き出します。
一方ボラティリティが上下する不規則なレンジでは、値動きが伸びる局面が利益を生み出し、勝率は61%でした。
上がって下がったら買う、下がって上がったら売る(値ごろ感での取引)
一度高くなったものが安くなったら値ごろ感で買い、一度安くなったものが再度高くなったら値ごろ感で売ります。トレンドでは大きな押し目で利益を吐き出してしまうのが特徴で、勝率は50%にとどまりました。
規則性のあるレンジでは、もみ合っているところで勝ち、値動きが伸びる場面で負けます。勝率は以外にも56%にとどまりました。
不規則なレンジでは、もみ合う局面でも値動きが結構伸びるので、値ごろ感のトレードは利益を出すどころか逆に損失となりました。勝率はたったの39%。
まとめ
上がったら買う | 下がったら買う | 下がって上がったら買う | 上がって下がったら買う | |
トレンド | 43% | 66% | 75% | 50% |
規則性のあるレンジ | 30% | 70% | 44% | 56% |
規則性のないレンジ | 41% | 62% | 61% | 39% |
値動きにシンプルについていく手法(上がったら買う)はトレンド、レンジいずれにおいても成績が悪いことがわかります。
トレンドが出ている局面では、小さなトレンド転換についていく手法が最強(勝率75%)でしたが、シンプルに下がったら買う逆張りも健闘しました(勝率66%)。
規則性のあるレンジでは、シンプルな逆張りが良さそうです(勝率70%)。
規則性のないレンジでは、下がったら買う逆張りか、下がって上がったら買う順張りが同等の成績でした。ただしいずれの手法も勝率60%強と、この相場の難しさを物語ります。
これまでの手法
これまではトレンド転換に乗っかる手法と、上がったら買う手法を全ての局面に適用していた感じです。上がったら買う手法は押し目無く上昇が続く局面では最強なのでしょうが、現在はコロナの前後にかかわらず振り落としが多いので不適切であり、これが成績を悪化させていた可能性があります。
また最近は4時間足レベルのトレンドすら出ないので、成績が悪化していました。
どの手法を採用するか
今回の検証の結果、シンプルな逆張りか、トレンド転換に乗っかる手法のどちらかを採用するのが良さそうです。
トレンドであればトレンド転換に乗っかる手法、それ以外であればシンプルな逆張りを選択するのが最善です。しかし問題はトレンドは発生したり消滅したりを繰り返しており、トレンドを想定して手法を当てはめても、実際は後から見たらトレンドではないこともあることです。
そこで唯一揺るがない情報として有効なのが、直近の相場の中でどのくらいの割合がトレンドであるかを基準にする方法です。
一般的な相場の頻度としては、規則性のないレンジ>>トレンド>規則性のあるレンジです。なのでほとんどの相場では、規則性のないレンジと、利益を大きく伸ばせるトレンドをカバーできるトレンド転換に乗っかる手法が良さそうです。この手法の進化させるとすれば、短期足でトレンド転換の初動をとらえて利益を大きくする方法です(早くエントリーすればその分ダマシにもあいやすくなりますが)。
この手法の問題点としては細かなもみ合いになると利益を吐き出してしまうことです。
例えば今の相場を見てみます。
値動きが伸びないもみ合いの個所が散見されており、利益が出せません。
そこでシンプルな逆張りを選択するとどうでしょうか。今回の検証で、この手法はレンジ上下限のもみ合いで3連勝できることがわかっており、もみ合いに非常に強いです。さらにトレンドにおいても勝率66%と、トレンド転換手法(75%)には劣りますが、トレンドに移行しても3回に2回は勝つことが見込めるオールマイティな手法です。よって現在の相場にふさわしい手法と考えられます。
結論
今回は、相場と手法をシンプル化してそれぞれの手法の勝率、強みと弱みを検証しました。結論としてはトレンド転換手法は、利益を伸ばせるトレンドと、頻度の高い規則性のないレンジに強く、最も優れた手法と考えられました。しかし細かな持ち合いでは連敗するため、直近の相場を観察し、持ち合いが多いようであれば持ち合いに非常に強く、オールマイティな手法である下がったら買う、上がったら売る手法に切り替えた方が良いと考えられます。
なお上がったら買う、今回下がったら売る手法については劣勢が確認されたため、押し目なくまっすぐに伸びるトレンドを除いては採用しない方が良いと考えられます。
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